何でも四谷のJ大では、夢見の古代誌、真怪研究、『冥報記』輪読、それぞれの研究グループが草木も眠れぬ真っ昼間から密談を繰り広げているそうな。

2009年10月1日木曜日

眼鏡と内観

7月に日本聞一多学会で発表した折、時間の関係で触れることができなかった話題にメガネがあります。ほとんど一発ネタなので、これだけで発表したり論文にまとめるには追加調査が必要なのですが、とりあえず。


近代知識人育成の牙城、雑誌『新青年』(第8巻3号、1920.11.1)に次のような眼鏡屋の広告が載っていたんです。やっぱり勉強すると目が悪くなるよね、と、してもいないのに目の悪い自分のことは棚にあげつつ広告の文章に目を落としてみたんですが。。。

視力をあげるのではなく、レンズによって目に入ってくる光を強化することで、健康になれますよ、とかそういう話になってるんですね。しかも目の位置と内蔵の対応関係まで図示されています。思想としては、「回光返照」(まなざしをひっくり返して目の光で身体内部の悪いところを焼いていく技法、だったっけ?)というものをふまえているようなんですが、しかし経絡みたいに目と内臓が対応しているというのは初めて見ました。これがどれほど道教の修養法や中国医学的知識の伝統と対応しているのか、あるいは近代的眼鏡ならではの科学の力とされたのか、そのあたりを今後調べてみようと思っていますが、これが迷信打破をぶち上げていた『新青年』に広告として載ったこと自体が、当時の状況を象徴していてたいへん興味深いのです。もっともこの広告はこのときだけで、何号か後には同じ会社のもっと普通の広告が載っていました。

日本の眼鏡にはこうした物語が語られたりはしてないものでしょうか。